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本格化を迎えるドローンの社会実装

8月下旬の東京 — ドローンに関連する人であれば誰でも注目したであろう2つの発表があった。1つは、経済産業省と国土交通省が事務局を務める「空の移動革命に向けた官民協議会」の発足とその第1回会合である。この協議会の趣旨は、「”空飛ぶクルマ”の実現に向けて、世界的にも関心の高まりがみられ取組が進められる中、日本においても人や物の移動の迅速性と利便性を向上させるとともに、新たな産業を育成し、世界の市場で稼げるようにするため」(第1回 空の移動革命に向けた官民協議会 開催資料 資料1より抜粋)とあり、また、「官民の関係者が一堂に会する」(同上)協議会として設立する、とされている。第1回の協議会では、産官学の有識者が集まり、スタートアップ企業・大企業・ベンチャーキャピタル等、様々なプレーヤーが自社の取組を紹介し、活況を呈した。

もう1つは、Uber Technologies社による”Uber Elevate”の日本での開催である。同社は”空飛ぶタクシー”に向けた将来の実験拠点として、日本・オーストラリア・ブラジル・インド・フランスの5か国を候補地として挙がっていることを発表。2023年にも商用サービスを提供する見込みであり、実験拠点として日本での実験も視野に入れている。

民間用ドローンは2010年以降急速に普及し、趣味、保守・点検、調査・研究、空撮等の分野での活用が進んでいる。現在は物流での活用にも大いに期待されている。実験的な活用事例も多く、実験結果を基にドローン自体の機能改善を続けていることもあってか、2016年頃までドローン関連スタートアップへの投資額も伸び続けていた。

Translink Capitalも2015年にハイブリッドエンジン搭載ドローンを開発するTop Flight Technologies社に出資し、米国・日本での事業開発を支援している。日本では、早期に規制が確立されたこともあり、手軽に実験することはできないものの、昨今の労働力不足・自然災害の頻発等を背景に、ドローンに対する期待感はそれなりに高まりつつあった。潮目が大きく変化したのは2017年の末頃。大企業側からヒアリング要請を受けることが増え、PoCプロジェクトの検討を開始する等、本格的な社会実装を目指す動きが見られ始めた。

このような背景の中、8月下旬の2つの発表は、ドローンが初期投資・研究開発フェーズを完了し、本格的な社会実装に向けて新たな一歩を踏み出したことを示していると言える。もちろん、これまで同業界を牽引してきた関係者皆様の努力の賜であることは間違いないが、この動きに応じた新たな産業の創出・育成が始まると強く感じている。

一方で、主として安全性を確保するための規制に関する議論・事業性についての課題感は強く、本格的な社会実装に向けては、まだまだ時間がかかるとも言える。特に、事業性については、初期投資額・費用対効果・ビジネスモデル等、スタートアップ企業や我々のようなベンチャーキャピタルを悩ませる課題が多く、一つ一つ解消していく必要がある。

これらの課題に対処しつつ、社会実装を更に進める一つのヒントが「空の移動革命に向けた官民協議会」の体制にあるだろう。産官学の関係者が一堂に会する上に、大企業・スタートアップ・支援者が参画していることで、様々なアイディアが生まれ、課題解決に向けた動きとなり得る。

スタートアップだけでも大企業だけでも社会実装は本格化しない。両者および官学が相互に助け合い、働きかけ合うことで社会実装は本格化する。Translink Capitalは過去10年間に及ぶベンチャー投資活動において、”Collaborative Venturing Model”を一貫して提唱・実行しており、この経験からも各界のプレーヤーによる積極的な関与が必須であるのは間違いない。今後ドローン社会実装が益々本格化することを期待するとともに、我々としても積極的に関与していくつもりである。

 

Author

Manabu Ando

Sep 17, 2018